さてボローニャに着いて早一週間が過ぎ、あっというまの休日である。研修所でのレッスンが忙しく、休日の予定など皆誰も立てるどころではなかった。全員「骨休め」という感じであったが、目が覚めて遅めの朝食を取る頃になると、やはりそこは若者、いろいろ言いだした。もし行きたい人がいたら連れてってあげるよ…と、昨夜の別れ際に森田先生からフィレンツェ-Firenze-行きを誘われていたのを思い出し、さっそく半数ほどの学生がまとまって森田先生に電話して約束を取り付け、支度をして出て行った。私の方は半日ぐらいは骨休めしたかったので、あえて学生たちとは別れて車でどこかにドライブに行こうと決めていたのだが、お金がないのか本当に疲れたのか分からないが、食堂に残って手持無沙汰にしているバリトンの松村君とテノールの加藤君に声をかけると、ぜひ連れて行ってくれという事で、男3人でのイタリアン・ドライブという事になった。目的地はあまり遠くなく、日曜日でも余裕で帰ってこれそうな、アドリア海岸のロッシーニ-G.Rossini-の生地、ペーザロ-Pesaro-に向かおうと決める。留学時代、何度か友達と車で夏休みに出掛けた懐かしい海岸の美しい街で、ピアニストのポッリーニ-Maurizio Pollini-氏などが中心になって立ち上げた「ロッシーニ音楽祭-Rossini Festival-」が始まる前は、中庭にロッシーニ像のある音楽院と彼の生家などだけが、意外とあっさりと道端から見つけられた印象があったが、それ以降のロッシーニ・ブームの結果か、今回、町の中心地に行くと町中ロッシーニ一色という感じで、春から続く音楽イベントの幟とポスターで一大観光地と化しているように見えた。しかし南イタリア独特の透明感高く澄み切って、湿気を感じさせない空と海の、その真っ青な中に包まれると、身体の底からの解放感が湧きあがってきて、とても懐かしい場所に戻ってきたような錯覚に陥った。何枚かの写真は撮って、イタリアの海の食材を並べたランチも堪能したが、あとは何もせず、街をぶらつき、時間で、来た道を戻ってきた…まさに骨休めとなった。