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ブログ倉庫1(2005/4-2014/10)

演奏会本番の朝を迎えてボレッリ館の最上階の我々グループだけの朝食用の部屋は閑散としていた。みな本番の日の過ごし方をそれなりに持っていて、バラバラに起きてくる。2週間この部屋での朝食をなるべく全員、一緒にとってその日の予定の確認や、連絡を行ってきた。出てくる朝食は決まっていてコーヒー、ミルク、水の飲み物と、パン、ビスケット程度しかなかったので、みんなで持ち回り制で買い出しを行って、ヨーグルト、ゼリー、果物、チーズなどを絶やさないようにしてきた。今日は最後なので今までの買い出しの分も含めて、ペンション代金や諸々の清算をしあった。食事の後で事務所に顔を出して宿泊代金の支払いを済ませた。オーナーの女性に学生たちからお礼の心をこめて風鈴を差し上げたところ大変喜ばれていた。

さて演奏会の前という切羽詰まった雰囲気の一方で、ボローニャ滞在も最後の日となったので、お土産や買い物の用事を済ませようと昼前から街の中心部に出掛ける者達もいた。買い物の人気はやはりボローニャの食に関したものが多く、ワイン、チーズやヴィネガーなどからチョコレートなども買っていたようだ。また夏休みに入る今は、一年の中でも、クリスマス、復活祭と並んで大きなバーゲンセールの時期で、夏ものに限らず冬ものも店頭に並んでの洋服、靴、バッグなどはかなり買い得な時期である。私も食関係は空港で買う事にして家族の女性たちへのお土産を物色に出掛ける。その後みんなは、午後9時の開演という夏のイタリア時間でのコンサートの前、3時をめどにSOIに集まり、部屋を借りて声出しをしたりして準備する。

今回のこのコンサートはボローニャ歌劇場のすぐ、はす向かいにあるサンタ・チェチーリア修道院-Chiostro Santa Cecilia-の中の歴史的な礼拝堂を使って、「ボローニャの夏週間-Bologna Estate-」の中の「サン・ジャコモ音楽祭 –S. Giacomo Festival-」の特別コンサートとして作っていただいた。この音楽祭はこの修道院を修める神父さんを中心に毎年行われているもので、今年も3月に始まって9,10月まで続いていて内容的にも大変バラエティに富んだ演奏会が並んでいる。私達の音楽会は「東京・国立音楽大学の学生による演奏会-Recital degli Allievi del Kunitachi College of Music di Tokyo-」と発表されていて、はっきりと国立音楽大学の名前をボローニャでアピールでき、学生達にとっても発奮の良い材料であったと思う。

このコンサートの伴奏をしてくれるのは、SOIのコルペティ・コースに在籍する岩淵慶子さん、玉川大学を卒業してから声楽の伴奏を極めたいと単身でミラノに留学し、そのままミラノ・G.ヴェルディ音楽院で、それこそ私の音楽院時代にクラスの伴奏をしてくれていたピアニストで、今や副学長クラスになっているというルイージ・ザナルディ-Luigi Zanardi-氏の元で学び、昨年のオーディションに受かってSOIで研修中という女性で、大変献身的に伴奏合わせ、リハーサルと本番を付き合ってくれた。セミナーの最初から彼女は顔を出してくれていて、演奏会の骨格が決まり始めた最初の週の金曜日頃からは、声楽のレドーリア先生のレッスンの伴奏、通訳も手伝っていただいていたので、みんなとても信頼を寄せて、曲目決定の相談から個人練習の伴奏などもやっていただいていたようです。

よくよく偶然だとは思うが世界は狭い。彼女はヴェルディ音楽院修了後、ミラノで、私の長い友人でメトロポリタン歌劇場の主要バリトン歌手として活躍した、ジョルジョ・ロールミ-Giorgio Lormi-氏の歌のレッスンでの伴奏者として昨年まで弾いていたというのです。ロールミ氏からのメッセージを預かってきた彼女の携帯電話で久しぶりに彼と話し、期間中に再会をと願ったのですが、残念ながら他の機会にせざるをえなかったのは返す返すも心残りであった。

さて日本だともう夜の演奏会が始まろうかという午後7時前に、修道院にみんなで移動して、さっそく最終のリハーサルを行う。アリアはずっと練習してきたのでちょっと歌い出しだけでも合わせればよいのかと思っていると、みんなちゃんと本番バージョンで歌い出した。やはり若いなあ、元気だなという感じか。修道院の中の礼拝堂という事でいつものコンサートホールなどとは違うので、出入りから立ち位置、退場などを指導し、3曲あるアンサンブルの簡単な演技の場所決めなどを手伝う。開演1時間前でリハーサルを終了し、みんなを楽屋に閉じ込めて、入り口に森田先生と回ってみる。続々とお客さんが集まってきていて、最後まで世話をしてくれているSOIのL.ロマスコ女史と、今日の司会をしてくれるというやはりSOIの男性が、二人して「この調子だと満席になるかもしれない」と驚いて話しかけてきた。開場を待って並んでいる中には一般のイタリア人のお客さんに混ざって、小谷さんを囲んでSOIの歌手達が大きくグループを作ってい、他には今日歌う学生の家族の方らしき人達と、現地在住らしき日本人たち、何人かは国立の卒業生も混ざっている。時間が迫り開場され、開演時には150名程度のキャパの礼拝堂が見たところ一杯という感じになった。

bologna316一人ひとり、とても頑張って良く歌ってくれた。お客様の反応も大変暖かく、みんなそれがとても力になったようで素晴らしい笑顔を持ってフィナーレを迎え、演奏会が終わった。みんな堂々として一列に並んだカーテンコールが何回か続き、最後にSOIから一人ひとりに、今回のセミナーの修了証、ディプロマが手渡され、それを誇らしげにかざしながらの記念撮影で演奏会を修了した。参加した学生達11名、伴奏の岩淵さん、私と森田先生、SOI側の小谷さんと歌手達、ロマスコ女史、それにに加えて、駆けつけてくれた日本人の方々、みんな入り乱れて、本当にこの場を去りがたく名残惜しげにいつまでも礼拝堂の心地よい深夜の冷気に浸っていた。

 

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